6月30日(土)
今日の一言(110)
『室に帰ってから興奮のあとのわびしさが来た。何かの話のついでに、生涯の仕事についてT君と話したが、自分の仕事をいよいよ大っぴらに始めるまで、根を深くおろして行くことにのみ気をくばっているT君の落ち着ついた心持ちがうらやましかった。根なし草のようにフラフラしている自分は、何かと考えなおさくてはならない。ゲエテのように天分の豊かなひとでさえ、イタリアへの旅へ出た時に、自分がある一つの仕事に必要なだけ十分の時間をかけなかったことを、またその仕事に必要な手業を十分稽古しなかったことを、悔い嘆いている。落ちついて地道にコツコツとヤリ直しをするほかはない。』(『古寺巡礼』和辻哲郎)